パラオの稚魚たち
4/9-17の日程で行っておりましたパラオ。DayDream RYOMA-1 Midnight Dive & Black Water Dive
® Collaboration Cruiseの結果報告です。
|
今回のRGBlueには、マンフロットの新型ミニ三脚 PIXI-EVOを中心に取り付けています。安定性抜群。 |
リーフ棲の魚類を中心にご紹介いたします。
ウナギ目のレプトセファルス期は今回も数多く表れ、複数種が見られました。
|
ウナギ目のレプトセファルス期 TL:90mm |
カクレウオ類のベクシリファー期・テニュイス期ともに、こちらも数多く出現しました。
|
カクレウオのベクシリファー期 TL:40mm |
胸鰭をヒラヒラと羽ばたきながら泳ぐハダカハオコゼの稚魚。リーフの上にいるときはじっとしているのに、遊泳期は比較的泳ぎが達者です。
|
ハダカハオコゼの稚魚 TL:50mm |
背鰭の第2棘と腹鰭の棘条が大きく伸長する、ハタ亜科稚魚。個体数は多い
|
ハタ亜科稚魚 TL:20mm |
日によって数多かったセミホウボウの稚魚
|
セミホウボウのケファラカンサス期稚魚 TL:45mm |
昨夜あたりに一度着底したのかもしれません。すでに模様が現れています。
|
ヨスジフエダイ稚魚 TL:25mm |
コチ科の稚魚も複数みられる。その一つ
|
コチ科の稚魚 TL::23mm |
比較的多かったハナダイ亜科の1種
|
ハナダイ亜科の稚魚 TL:25mm |
赤い斑点が均等に配置されるのが特徴。着底するとかなり地味に
|
フサカサゴ科の稚魚 TL:25mm |
この時期のキンチャクダイ科稚魚はほとんど本種でした。
|
キンチャクダイ科の稚魚 TL:30mm |
トリクチス期稚魚の中では比較的わかりやすい。
|
ヤリカタギ稚魚 TL:17mm |
フグ科稚魚はなかなか種の区別が難しい。
|
フグ科稚魚 TL:10mm |
ハコフグ科コンゴウフグ属。成魚はなぜかパラオでは数少ないようですが、その割に稚魚は頻繁に見かけます。
|
コンゴウフグ属稚魚 TL10mm |
|
キヘリモンガラ稚魚 TL:32mm |
吻部や鰓蓋部、後頭骨部などが棘状に張り出すイットウダイ科の稚魚の特徴
|
アカマツカサ属のリンキクチス期 TL:20mm |
出現種はまだまだいるのですが、続きは折を見てご紹介することにします。また、今回、坂上治郎さんの研究対象でもある深海性魚類も出現しましたが、ここでの掲載は差し控えておこうと思います(またの機会にでも)
パラオの頭足類たち
パラオの夜の海では様々な頭足類(Cephalopoda)も数多くみられます。
ホタルイカモドキ科では、フィリピンホタルイカ
Abralia (
Abralia)
spaercki Grimpe, 1931の他、オビスジホタルイカ
Abralia (
Abralia)
steindachneri Weindl, 1912なども上げられます。オビスジホタルイカの既知の分布域(東シナ海からインドネシア,インド洋,紅海からオーストラリア西岸の熱帯域)にパラオは含まれていませんが、おそらく、これよりもさらに広範囲に分布しているものと思われます。
|
フィリピンホタルイカ Abralia (Abralia) spaercki Grimpe, 1931 ML:40mm |
アカイカ科では、トビイカ
Sthenoteuthis oualaniensis (Lesson, 1830)の他、
Sthenoteuthisの隠ぺい種が1-2種ほど、ヤセトビイカ
Ornithoteuthis volatilis (Sasaki, 1915)などが代表的です。
|
トビイカ Sthenoteuthis oualaniensis (Lesson, 1830) ML:25cm |
|
ヤセトビイカ Ornithoteuthis volatilis (Sasaki, 1915) ML:15cm |
トビイカには複数の隠ぺい種が含まれていることが、奥谷先生らによって指摘されています。本種はおそらくその一つになると思われます。
|
Sthenoteuthis sp.1 Sthenoteuthis属の隠ぺい種 ML:18cm |
タコ類の幼生も各種数多くみられますが、これらの種の特定は困難を極めます。
|
マダコ科 幼生 不明種 |
今回、おそらく世界で3例目となるムラサキダコ
Tremoctopus gracilis (Eydoux & Souleyet, 1852) の貴重なオスの生態撮影ができました。ムラサキダコは腕に膜を持つ外洋遊泳性のユニークなタコです。そのオスはメスに比べて非常に小さく、これまではプランクトンネットによる調査サンプルなどで捕獲されてきたにすぎません。メルボルン大学のDavid Paul氏によってGreat Barrier Reef, Australiaで世界初の生態撮影がなされ、2002年にNorman博士らによって報告されたのが最初です。その際には、クラゲなどの刺胞動物の触手を持っていることが報告されていましたが、その後、本種が選択的にカツオノエボシの触手などを保持していることがTree of Life Web Projectなどでも改めて報告されています。このクラゲ触手の利用方法については、これまで防御または攻撃のためと考えられてきていますが、実際にこれらの生態を解明していくのが、現場にいる我々カメラマンの今後の仕事になるかと思います。
|
ムラサキダコ Tremoctopus gracilis (Eydoux & Souleyet, 1852) ,male, ML:15mm |
|
腕の吸盤上にカツオノエボシのものと思われる触手を付着させている |
REFERENCES
沖山 宗雄 (編集)(2014).
日本産稚魚図鑑
奥谷 喬司, (2015). 新編 世界イカ類図鑑
P. Jereb & C.F.E. Roper, (2010). Cephalopods of the world. An annotated and illustrated catalogue of cephalopod species known to date. Volume 2. Myopsid and Oegopsid Squids. FAO Species Catalogue for Fishery Purposes. No. 4, Vol. 2. Rome, FAO. 605p
Norman MD, Paul D, Finn J & Tregenza T (2002). First encounter with a live male blanket octopus: the world's most sexually size-dimorphic large animals. New Zealand Journal of Marine and Freshwater Research, Vol 36.
Tremoctopus - Tree of Life Web Project